菜園日誌

季節のお便り その1

2021年9月7日 火曜日 快晴の朝

あんまり天気がよいので、畑の写真を撮ってきました。季節のお便りとさせていただきます。

私たちのブドウ畑です。傾斜7%、北東向きの緩斜面となっています。手前は昨年秋にT農園さんからいただいたモミガラ。1年間掛けて、漸く使い切りました。

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私たちの農園においで下さった方へ、この季節を味わっていただくための生食用ブドウ:
デラウェア(早生のバファロー)、甘くなっています。

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同じく、生食用ブドウの竜宝。三々五々と黒く熟していきます。青いのは酸っぱく、黒いのは甘くて美味しい、というわけです。竜宝という品種は皮が弱いために傷つきやすく、市場に出回らないのだそうです。ですから、この季節に畑にいらっしゃった方々だけが楽しめる味です。いつぞや、農園で働いているL氏がロシア語・市民語学教室におみやげで持って行ったところ、ご婦人方(60歳超の元気盛りの方々がメインとのこと)に、「昔懐かしいブドウの味」ということで評判上々だったとのこと。このような昔の味はなかなか味わえないのだそうです。ちなみにご婦人方には、ブラックビートやシャインマスカットがトレンドとのことでした。

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ブラックビート。よく熟してきました。

同じく、ブラックビート。ブドウらしい美味しさです。ブラックビートはやや寒さに弱く、数年前に植えた4本のうち、1本は前の前の冬の凍害で枯れてしまいました。生き残った3本は、今年は元気いっぱいです。とても暑い夏だったので、今年は実りが早いようです。熟した後もそのまま樹にならせておくと、10月末頃まで、食味の変化を感じながら、それぞれに美味しく食べられます。そんな意味でもブドウはなかなか優れた果物です。

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同じく、生食用のサニールージュ。デラウェアより少し大きめの実を付ける豊産種です。赤から黒まで、いろいろなニュアンスの果皮に色づいています。甘くて、癖がなくて食べやすいブドウ品種です。

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こちらはナイヤガラ。私たちの農園にはたった2本しか植わっていませんが、最も病気知らず、格段に豊産を誇る元気葡萄です。北海道の気候にとても合っているのかも知れません。

同じく、ナイヤガラ。大きな房で鈴生りです。つい先日まで、固く、超がつくほど酸っぱかったのに、今日食べてみると驚くほど甘く美味しくなっていました。とても甘いけれども、とても酸っぱい品種です。

残念ながら、ワインにするには果汁が搾りにくく難しいと聞いています。また、アメリカ種特有のフォックス香が、ヨーロッパの方々には評価が低いとされています。

けれど、私はこのブドウらしい味と香りが好きです。子供の頃に食べたブドウの味を思い出します。そして、このナイヤガラ、私がほとんど世話しなくても本当に上手に育てられるのです。生まれながらのブドウ栽培名人になったような気持に浸れます。

そこで、こんなに上手に作れるなら、もっともっといっぱい植えて・・と提案すると、家族を含め皆からいつも「止めた方がよい。ナイヤガラは食べ飽きやすいので、2本で十分。もっと難しい品種に挑戦するように」と諭されます。

私、もともと安易に流れやすい生まれつきでありながら、状況にながされて(いわば J.Austen 流の Persuasion です)いつも難しいものに手を染めて失敗をくり返すというのが、私の過去から現在までのパターンです。もうそろそろ観念して、安易なものへの未練を捨てなければならない時期なのかもしれません。そして、人々からのアドバイス通り、他山の石・覆る前車として散っていく運命を受け入れなければならないのかもしれません。

・・それはともかく、ナイヤガラはブドウらしい香りの味わい、甘く美味しく、烈しく酸っぱく(爽やかフレッシュ)、少年時代から私の好きなブドウの一つです。

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さて、このブドウの房は、北海道に育つシャインマスカットなのです。

そしてこれが、シャインマスカットです。当園では最も晩生のブドウです。今も実は固く、食べれば超・超酸っぱいでしょう。

良い年であっても、10月下旬になって漸く熟します。従って、10月で雪が降るような寒い秋であれば、この地では決して実ることはないでしょう。

さて、この夏は北海道も猛烈に暑い日々が続きました。9月に入っても例年になく穏やかな爽やかな葡萄日和が続いています。なので、今年はこのシャインマスカットが美味しく食べられるかもしれません。

同じく、シャインマスカット。北海道で育たないものを植えて、みすみす失敗するのは、さすがの私も気恥ずかしいのです。だから、当園でシャインマスカットを植えています、という事実はしばらく隠密でした。一昨年ぐらいから、10月も末、秋深まった頃に美味しく実ることがわかりました。

これなら、シャインマスカットも北海道で育てられる、と思い始めたその次の冬(2020年の1〜3月)、この空知地方は珍しく雪が少なく、そしてやっぱりマイナス20度もの寒さもある厳しい冬を経験しました。ブラックビートやソーヴィニヨンブランなどと並んで、特にシャインマスカットはことさら烈しい凍害に見舞われ、高価な接ぎ木苗は全滅枯死、自根苗も地上部の芽は一旦は全滅しました。当園の現在のシャインマスカットは、根が生き延びていた自根苗の地下部から新しいシュートが伸び出してきて再出発したものです。そのうちの数本から、数房の実が実っている姿がこの画像です。

前述のナイヤガラが、寒い冬にも負けず、豪雪の重圧をも受け流し、春になればけろりと何事もなかったかのように元気よく育っているのに比べると、このシャインマスカットは、北海道では作れない葡萄と言って良いのかもしれません。けれども、これからもこのような難しい品種の栽培にさまざまトライして経験を積んでいきたいと思っています。

このような背景があるシャインマスカット、この10月、当園にお越しの際、その酸っぱさ、未熟さ(もしあれば)を暖かい度量でお許しいただき、甘さ、マスカットの香り、それぞれを今年の夏から秋の日々の集成の結果として楽しんでいただけましたら幸いです。

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