菜園日誌

Bacchus 2020 を試飲しました。

2021年9月23日 木曜日

散らかりながらも、くつろぐわが家。私の書斎机兼メイン食卓の上は秋のバラでいっぱいです。
バッカス2020は、爽やか系のワインなので、リースリンググラス(一番上に載せたポスターに写っているような、やや飲み口の狭いグラス)で味わうのがお奨めです。が、今日は敢えて飲み口の広いシャルドネグラスで味わってみました。

今シーズンは夏の良い天候に恵まれて、豊産、かつ、ブドウの質も良いものとなりました。期待できます。

先週、9月19日〜21日で当園のバッカスの収穫を行いました。収穫のお手伝いしてくださったボランティアの方々に感謝しております。

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210914a 収穫を待つバッカス。綺麗です。快晴の朝日を浴びてのピーカン撮影です。背景で青や白に見えるのは、人家の屋根ではなく、誘引に使ったポリエチレンの紐です。 (註:今年は9月19日〜21日で収穫して、今では空の巣症候群のバッカス達になっています。)

さて、早生品種の収穫が終わって、少し息つけた秋分の日、家人と二人で私たちの Bacchus 2020 をテイスティングしてみました。

香りは上品なフローラル。

さわやかな、飲みやすいワインだと思います。

余韻の豊かさも好みです。

2020ヴィンテージのバッカスは10Rワイナリーのブルース・ガットラブさんのところで委託醸造していただいたものです。期間を通じて、ブルースさんから醸造について多くを教えていただきました。私たち家族3人にとっても、思い出に残るワインとなりそうです。

2021年ヴィンテージからは、私たち自身のワイナリーでの醸造となります。

私が札幌で農業研修を始めたのが2013年の春ですから、今期が私たちの9シーズン目の「農」となります。今年9月19日に収穫したバッカス(2021年ヴィンテージ)は、2016年の春に新植した6年生の樹に実ったものです。6年目にもなると樹は随分と大人になってきました。

バッカスという品種は、ケルナーと並んで、北海道では最もよく栽培されている白ワイン用ブドウ品種の一つです。早生品種で、北海道では9月の中下旬に収穫します。私の経験では、晩生のソーヴィニヨンブランやシャルドネに比べて、完熟させた場合には、果皮や花梗が灰色かび病に冒されやすく、病果を選果除去するのに随分と手間取ってしまいます。特にここ数年は8月下旬から9月の天候が、北海道らしからぬと言いたいぐらいの暖かい日の続くことが多く、特に灰色かび病を中心として、バッカスに病果が多いように思われます。いつまでも待っていても酸が落ちるだけで糖度が一向に上がってこない、そして灰カビだけが増えてきているようだ・・と心配させられた年度もありました。栽培や収穫の観点からは、総酸量が落ちてくるよりも前に、つまり少し酸っぱいうちに収穫した方が良さそうです。私自身は完熟させた香りのふくよかなものが好みなので、収穫時期の決定が悩ましくなります。未解決の課題です。

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上に申し述べたような事情で、バッカスの選果には多大な苦労を伴う年度があります。そして、今回の2020ヴィンテージのバッカスは、まさにそのような大苦労=選果を経た末の清らか・純のバッカスなのです。雑味のない、上品で花やかなバッカスの香りは、労を厭わずしっかりと選果して下さった援農の方々=友人の皆さまのおかげで生まれたものです。本当にありがとうございました。

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どんなワインを作りたいか? と問われると、ワインの香りや味の論議が始まりそうですが、私たちのイメージは少し違った視点です。

すなわち、

・・日常の暮らしの中で、小さな喜びのあった日の宵に、親しいひとと一緒にささやかなお祝いをする時に、思い出(や将来への抱負やその他何でも・・)を語り合う時間のお供に選んでいただけるようなワインを作りたい・・そんな念いでブドウ栽培の農作業とワイン作りに励んできました。

たとえば、熟年のご夫婦の場合・・

銀婚式(25年目)でも、真珠婚式(30年目)でも、ルビー婚式(40年目)でもない、ごくありふれた(?)年度のご夫婦のアニヴァーサリー(結婚記念日)などに、何とは無しに、「今日はこれを」と自然に選んでいただけるような、人と人とをつなぐ静かな時間の脇役となるようなワインをイメージしています。

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蛇足になりますが、

テレサテンがカバーで歌う、スティービー・ワンダーの “I just called to say I love you” をイマジンしています。この9月〜10月の季節でいうなら、

・・

No autumn breeze

No falling leaves

Not even time for birds to fly to southern skies

・・云々、云々、

となります。

あ、ところで、さらに蛇足ですが、

私たちの10月の収穫を手伝って下さった方々は、恐らく漏れなく、我らの作業している畑のはるか上空をオオハクチョウのV字編隊が(あのトランペットのような声で)鳴き交わしながら飛んでいくのを見られます。それも次々と何隊も。青空に白鳥の白は、雄大です。季節を感じられます。

というのも、シベリアやカムチャッカ方面から飛来してきた白鳥たちが、空知の石狩川が蛇行して作った沼(有名なのは宮島沼)でしばし停泊滞在して秋の日々を過ごすためです。私たちの畑は千歳(収穫後の畑に残ったトウモロコシを白鳥たちがパクパク食べます)や東北方面(暖かい南)への飛行経路の真下に当たります。

But what it is, though old so new

To fill your heart like no three words could ever do

I just called to say ・・

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